多様な価値観と意見から生まれた「松原の黒い家」

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家作りの過程においてしばしば発生するのが、夫婦や家族間の好みの違いや求めるもののズレ。全員の意見を取り入れたいけれど、好みのスタイルが大きく違えばちぐはぐな家になっていしまう。しかし誰かが納得しない形で妥協すればわだかまりが残る… 。家はそう簡単に買い替えたり幾つも持てるものでないだけに、こうなってしまったら問題です。そこで今回紹介したいのが、兵庫県に拠点を置くEU建築設計に依頼をしたクライアントの事例です。夫はシンプルなスタイルを好み、特に玄関とお風呂に演出をしてほしいと望み、専業主婦の妻は台所を好みのカントリー調に、と望まれました。無駄の無いシンプルなミニマルスタイルと、温かみとノスタルジーを感じさせるカントリースタイルは正反対と言ってもいいほど違っています。しかしとても仲の良いこのご夫婦。建築家と話し合いを重ね、その中で少しずつルールを設けながら、まる1年を費やしてお互いが納得できるような答えを見つけたそう。いったいどんな住宅になったのでしょうか。

外観

真っ黒の四角いキューブに赤いドアがひとつ、というインパクトとビビッドなコントラストが印象的な外観。外壁は質感のある焼杉板で、べた塗りの黒ではないところが有機的。扉の高さはなんと約4mあり、通りのアイキャッチとなっています。この真っ赤な扉を入ると玄関アプローチがあります。

玄関アプローチ

北側は2階建てアパートの駐車場に面しており視線が気になるため、アルミ格子で囲われたアプローチとしました。これは目隠しだけでなく風通しを確保し、さらに強い日差しをはね返しつつ、北側の部屋に採光をもたらしています。夫が希望した演出された玄関は、吹抜けが気持ち良く、木漏れ日を浴びているかのような優しい陰影のあるエントランスとなりました。

LDK

こちらはキッチンからリビング&ダイニングを見たところ。南側ウッドテラスに面した大きな開口部だけでなく、右手の壁に設けられたスリット窓は、玄関アプローチに面しており北側からも日光が差し込む明るいLDKです。

キッチン

こちらが妻が希望したカントリースタイルのキッチンです。白いタイル張りのカウンター、無垢材、黒いアイアンの取っ手などカントリーな要素がたくさん。しかし白をベースにまとめたことと、レンジフードカバーに使われた差し色など、モダンなスパイスを投入したことでスタイリッシュな雰囲気をまとったキッチンとなっています。

価値観の多様化に対応する設計

建築家は「振り返ってみると、計画の過程で全体を制御する一つのコンセプトというものがなかったことが、この家の特徴かもしれない」と言います。色んな価値観の人が集まり全く正反対の意見も出るような状況で、誰かが一つを選択してもまとまる訳はありません。しかしお互いの意見を否定せずポジティブに捉えること、話し合いを重ねるうちそれらの意見が混じり合い方向性が出てくる… 。「価値観が多様化している現代だからこそ、こういう設計の進め方も有効かもしれない」と。

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